自社で解決!外注を減らすための内部スキルアップ法
1. 序章: 外注を減らす意義
(1) コスト削減への寄与
外注を減らす最大のメリットは、何と言っても「コスト削減」です。外注には、業務委託費だけでなく、コミュニケーションコストや品質管理コストも発生します。これらを内製化することで、業務の効率化と共にコスト削減が可能となります。
具体的には以下のような削減が見込まれます。
〈表1〉外注と内製のコスト比較
外注 | 内製 | |
---|---|---|
業務委託費 | 〇 | △ |
品質管理コスト | 〇 | △ |
コミュニケーションコスト | 〇 | △ |
※〇:高い △:低い
しかし、内製化には初期投資や人材教育による時間コストが必要です。これらを勘案し、全体のコスト削減が見込めるか検討することが重要です。
(2) 内部スキルの向上
外注を減らすためには、自社の内部スキルを上げることが不可欠です。まず、必要なスキルを明確に理解し、その後、適切な教育・研修プログラムを設計・実施します。
例えば、以下のようなスキルアップの進め方があります。
- 【スキル分析】 自社が必要とするスキルを詳細に分析します。これには、具体的な業務内容や未来のビジョンも含まれます。
- 【教育・研修の設計】 上記の分析結果を元に、社内教育・研修の内容を設計します。質の高い研修を提供するために、専門家を招くことも考えられます。
- 【教育・研修の実施】 設計した研修を実施し、従業員のスキルアップを図ります。
スキルアップは一度で成果が出るものではありません。定期的な評価とフィードバックを通じて、徐々に自社の内部スキルを強化していくことが重要です。
2. 外注と内製のメリット・デメリット
(1) 外注のメリットとデメリット
外注には様々なメリットがあります。まず第一に、専門的な業務を専門家に依頼することで、高品質な結果を期待できます。また、短期的なプロジェクトや一時的な業務量増加に対応する際は、外注先の力を借りることで業務のスムーズな進行が期待できます。
しかし一方で、外注にもデメリットがあります。例えば、外注先とのコミュニケーションが取りづらい場合、指示のミスや誤解が発生しやすいという問題があります。また、外注によって社内のスキルが伸び悩むという問題もあります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
外注 | 高品質な結果が期待できる 一時的な業務量増加に対応可能 | コミュニケーションの誤解が生じやすい 社内スキルの向上が難しくなる |
これらを踏まえ、どの業務を外注に出すか、自社で対応するかのバランスを見つけることが求められます。
(2) 内製のメリットとデメリット
内製化には様々なメリットがあります。まず、コスト面では、外部業者に依存せず、自社で業務を遂行することでコストを削減できます。また、業務の進行状況を自社で把握しやすいため、情報の透明性が保たれます。
さらに、自社で業務を行うことでスキルアップが期待できます。特定の業務について深く知識を持つことが可能となり、それが競争力向上につながります。
一方、内製化にはデメリットも存在します。例えば、新たな業務を内製することで、初期コストが発生する可能性があります。また、専門的な知識を必要とする業務であれば、教育・研修に時間がかかることもあります。
以下の表にメリットとデメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
内製 | ・コスト削減 ・情報の透明性 ・スキルアップ | ・初期コストの発生 ・教育・研修に時間がかかる |
以上を踏まえ、内製化する業務を選定する際は、メリットとデメリットをしっかりと比較検討し、自社の状況に合った最適な判断を行うことが重要です。
3. 外注を減らす判断基準
(1) 内製する場合に必要な作業環境整備も考慮する
外注を減らすためには、内製するための適切な作業環境の整備が欠かせません。まず、具体的な業務内容に応じた適切な設備やソフトウェアの準備が必要です。例えば、デザイン業務を内製する場合、専門的なソフトウェアやハイスペックなパソコンが求められるでしょう。
次に、作業スペースの確保も大切です。内製する業務が集中力を必要とするものなら、静かな環境を整えることが重要になります。
また、業務を担当するスタッフのスキルアップも重要です。新たな業務を任せる場合、そのスキルを身につけるための研修や教育も予め計画しておくべきです。
このように、内製化を進める上で作業環境の整備は欠かせない要素となります。
(2) 本業の本質にかかわる業務か否か
自社の業務を見直す際、外注を減らすために最初に考えるべきは、その業務が本業の本質にかかわるものかどうかです。本業に密接に関わる業務は、自社で遂行することで、ブランド価値やサービス価値を高めることができます。
例えば、製造業であれば生産現場の業務、IT企業であればソフトウェア開発などが該当します。これらはそれぞれの企業の競争力を左右する重要な領域であり、外部に依存せず自社で手掛けるべきです。
以下の表は、業務内容によって外注するべきか内製するべきかを示したものです。
業種 | 本業 (内製すべき) | 非本業 (外注可能) |
---|---|---|
製造業 | 生産現場の業務 | 広報、人事、経理等 |
IT企業 | ソフトウェア開発 | 総務、法務、広報等 |
こうした視点から業務を見直し、本業の本質にかかわる業務を自社で遂行することで、外注を減らすとともに自社の競争力を維持することが可能となります。
(3) 業務の緊急性と自社の受け入れ状況はどうか
外注を減らす判断基準の一つとして、業務の緊急性と自社の受け入れ状況を考えることが重要です。
まず、業務の緊急性についてですが、短期間で結果を求められるタスクの場合、外注に出すことで時間短縮が図れます。しかし、それが長期的な業務となると、内製化を視野に入れるべきです。
次に、自社の受け入れ状況です。ここでは、以下の二つの観点から判断します。
受け入れ状況 | 対応策 |
---|---|
自社で対応可能 | 内製化を進める |
自社で対応困難 | 外注継続もしくはスキルアップを図る |
自社で対応可能ならば内製化を進めるべきです。逆に、難しい場合は外注を継続するか、スキルアップを図るかを考えましょう。
(4) 自社の現状のノウハウで充分対応可能か
外注を減らすためには、自社の現状のノウハウが充分に対応可能かどうかを検証することが重要です。例えば、IT業務を考えた場合、自社でシステム開発が可能なスキルを持つ人材がいるのか、またその人材の業務量やスケジュールは許容範囲内なのかを確認しましょう。
以下に具体的な検証項目を表にまとめます。
検証項目 | 内容 |
---|---|
スキルの有無 | その業務に必要なスキルを内部に持っているか |
人材の業務量 | 既存の業務量に新たな業務を加えても許容範囲内か |
スケジュール | 新たな業務をこなすためのスケジュールが確保できるか |
これらの検証を通じて、「自社の現状のノウハウで充分対応可能か」を評価し、外注を減らし、自社のスキルアップを図っていきましょう。
(5) その業務のノウハウを自社に持ちたいか否か
「その業務のノウハウを自社に持ちたいか否か」は、外注を減らす判断基準の重要な一つです。特定の業務についてのノウハウは、それが自社の競争力を高めるための独自性や強みにつながる可能性があります。
例えば、ITシステムの開発やマーケティング戦略などは、自社のビジネスモデルや顧客基盤に深く関連しています。これらの業務についての専門的な知識や技術を自社のものとして持つことで、より効率的で効果的な結果を生むことができます。
一方で、広告制作や営業支援などの業務は、外部の専門家に依存することも一定のメリットがあります。しかし、それらの業務についても自社で対応する能力を持つことは、コスト管理や業務フローの最適化、より細やかなニーズ対応など、多面的な利点をもたらします。
このように、業務のノウハウを「自社で持つべきか」を考える際には、その業務が自社の競争力にどのように影響を与えるかを検討することが重要です。
4. 内製に向けたスキルアップ法
(1) 社内研修・教育によるスキル向上
社内研修・教育は、外注を減らすための重要な手段です。まず、対象業務の知識・技術を拡張するための研修を開催しましょう。例えば、もしIT関連の業務を外注しているなら、社内で基礎的なプログラミング教育を実施することが効果的です。さらに、外部講師を招いての講習やセミナーも有効です。
次に、新たに習得したスキル・知識を実務に活かすための教育が重要です。新しく学んだ知識を実践の場でどのように用いるか、実際の業務を通じて学びましょう。
また、教育・研修は一定期間ごとに行うようにし、社員のスキルを持続的に向上させる体制を作ることも必要です。これにより、外注を減らすだけでなく、組織全体の生産性向上にも寄与します。
(2) 内部メンターシップ制度の活用
内部メンターシップ制度は、経験豊富な社員が新人や未経験者に業務の知識を伝達し、スキルの向上を図るための有効な手段となります。
具体的には、専門知識を持つベテラン社員が、メンティ(教育対象者)と一対一で関わり、直接指導します。これにより、メンティは業務の理解を深め、他の職員が持つ豊富な知識や経験を吸収することが可能となります。
また、定期的なフィードバックを行うことで、メンティの成長を確認し、必要なアドバイスを提供します。このような継続的なサポートにより、メンティのスキル向上を促進し、内製化への道筋を作ります。
内部メンターシップ制度によって、外注を減らすためのスキルアップが実現可能となります。仕事の質の向上だけでなく、社員同士の繋がりも強化するため、モチベーション向上にも寄与します。
(3) 定期的な業務報告・フィードバックを通したチームスキルの向上
外注を減らし、内製化を進めるためには、定期的な業務報告とフィードバックが大切です。
まず、各メンバーからの業務報告を設けましょう。これは、個々の能力や業務の進捗状況を把握するために必要で、全体の生産性向上にも寄与します。
報告項目 | 内容 |
---|---|
作業内容 | 行った作業の具体的な内容 |
進捗状況 | 目標と現状のギャップ |
課題・問題点 | 解決が必要な事項 |
次に、報告を基にしたフィードバックを行います。これにより、メンバーのスキル向上を促すとともに、チーム全体としての問題解決能力も高めることができます。ここで重要なのは、ポジティブなフィードバックと建設的な批判のバランスです。これらを通じて、外注を減らすための内部スキルアップを実現しましょう。
5. まとめ: 外注を減らすための戦略とその実践
外注を減らし、内製を増やすための戦略は以下の3つのステップで実践します。
- 判断基準の設定: 外注と内製のメリット・デメリットを理解し、業務の本質、緊急性、受け入れ状況、ノウハウの有無、そしてノウハウの必要性を判断基準として設定します。
- 内部スキルアップ: 自社で対応可能な業務に関するスキルを社内研修、メンターシップ制度、定期的なフィードバックを通じて向上させます。
- 実践と見直し: 初めて内製する業務では、結果を見ながら必要に応じて判断基準やスキルアップ方法を見直します。
以上の方法で、外注を減らし、自社の業務効率とスキル向上を図りましょう。